日本催眠医学心理学会 第66回大会

ご挨拶

大会長 小泉晋一(共栄大学)

 第66回大会を2020年11月27日(金)から29日(日)の3日間、六本木の東洋英和女学院で開催する方向で準備を進めていました。しかし3月頃から新型コロナウイルスの感染拡大が激しさを増し、4月7日に新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が出され、5月4日に緊急事態措置の期間が5月31日までに延長されました。この措置が功を奏したためか感染者も漸減して、5月25日に全国で緊急事態宣言が解除されましたが、およそ百年前に流行したスペイン風邪の例を考えると、数か月後には第二波が到来することも予測されます。
 このような見通しが立たない状況の中で大会の準備を進めてきましたが、開催の可否の判断が難しく、第66回大会実行員会で協議を行いました。その結果、新たな試みとして、オンライン会議用のアプリケーションソフトウェアとして広く利用されているZoomを用いた大会を企画することになりました。本学会の理事会などの会議や大学の授業ではZoomを利用しているものの、Zoomによる大会を開催するには検討すべき課題が多々あり冒険でもあるとは思いますが、これからの時代の流れを考えると新たな試みとして挑戦する価値はあると思います。ウイルス感染を避けるために、大会のシンポジウムや演題発表、懇親会などすべてZoomを用いて行う予定でいますが、これらの内容は従来の大会と遜色のないものになるようにしていきたいと考えています。
 大会のテーマは「催眠の可能性」としました。公認心理師の資格が誕生してから、今後ますます臨床実践の成果が期待され、責任も重くなることと思います。また以前よりもエビデンスに基づいた臨床実践が重視され、特定の心理技法に偏るのではなく、クライエントの症状やニーズに合わせた技法の選択が求められ、臨床実践の状況も変わりつつあります。このような状況のなかで我々は催眠を用いて何ができるのか、催眠を活用した臨床実践を発展させるためには何をすればよいのか、本大会ではこれからの催眠の可能性について考えるために「これからの臨床催眠の可能性を考える」というシンポジウムを用意しました。このシンポジウムでは各領域で催眠を用いた臨床実践をされている方をお招きして、催眠による具体的な実践例と今後の催眠の可能性について話題提供をしていただく予定です。
 また、これからの催眠の可能性を考えるうえでは、催眠に関する基本的な概念の整理をしておく必要があります。メスメリズム以来の催眠の歴史は長いとはいえ、催眠の定義は未だに定まっておらず、まして催眠と深い関連のあるトランスという言葉に至ってはそれ以上に曖昧なままです。トランスについては前回の65回大会のシンポジウムで議論が起き、フロアの方々から有益な意見をいただきました。そこで本大会では「催眠について考える」という催眠そのものやトランスについて考えるシンポジウムも企画しました。このシンポジウムでは、催眠の経験が豊富なかたにご登壇いただき、経験をとおしたうえでの催眠に関するご自身の見解についての話題提供をお願いする予定でいます。その他にも、催眠の資格問題やミルトン・エリクソンに関する教育講演なども企画しています。
 インターネットをとおしての今までとは違う大会となりますが、インターネットに接続できる環境さえ整っていれば気軽にご参加できると思います。皆様のご参加を心からお待ち申し上げます。