日本学校心理士会2021年度大会
大会テーマ:コロナ禍の中での学校心理士の役割

研修講座一覧

各研修講座詳細は【概要】をクリックすると表示されます。
また、各研修講座は2時間ずつとなります。
(時間が長いため、オンデマンド配信ページ上では、講座動画は数本ずつに分かれて掲載となります)

研修①

【領域】

学校心理学

【テーマ】

相談できない心理(援助要請)とスクールカウンセリング

【講師】

本田 真大(北海道教育大学函館校 准教授)

【概要】

学校心理学はすべての子どもたちの学校生活の質の向上をめざした学問です。学校で苦戦する子どもの中に,ニーズがあっても自ら相談しない(できない,ためらう)子どもたちがいます。このような心理は「援助要請」と呼ばれ,近年では「援助要請に焦点を当てたカウンセリング」(本田・水野,2017)として,カウンセリングに応用する試みが始まっています。本研修では学校に関わる援助要請への困難さに対する援助を解説します。援助要請と学校心理学の基本的知識を説明した後,一次的援助サービスの方法(SOSの出し方に関する教育),二次的・三次的援助サービスの方法(対象者の主訴(いじめ被害,不登校など)に「相談しない(できない,ためらう)こと」も困り事として重なっている事例のアセスメントと援助),について解説します。動画を見ながら各自で取り組む演習を交える予定です。

研修②

【領域】

教授・学習心理学

【テーマ】

主体的で深い学びを促す学習支援の心理学

【講師】

深谷 達史(広島大学大学院 人間社会科学研究科 准教授)

【概要】

児童生徒の豊かで楽しい学校生活を保障するうえで,児童生徒の学習状態を的確に把握し,必要に応じて効果的な支援を図ることは,学校心理士に求められる専門的力量の一つであろう。本講座では,教授・学習心理学の重要なキーワードである「(深い)理解」,「学習方略」といった概念を取り上げ,解説する。そのうえで,学習につまずきを抱える児童生徒に対して複数回の個別的な相談を通じてつまずきの解消を目指す実践的研究活動である認知カウンセリング(市川,1993)の概要と事例を紹介することを通じて,児童生徒の深い理解の達成と効果的な学習方略の習得を促すためにどのような点に留意すればよいかを考える。

研修③

【領域】

発達心理学

【テーマ】

学校で生じる「性」に関する問題に私たちは何ができるのか?

【講師】

菊池 春樹(東京成徳大学 准教授)

【概要】

ご存知のように,「ネガティブな情動が喚起されたとき,人との近接を求める」欲求は誰にでもある。そして,「人との近接を求める」中で作られていく信頼や表象が,発達心理学の主要な理論の1つであるアタッチメント理論のキーワードである。
「人との近接を求める」行動の制限がまさにコロナ禍と言えよう。私たちの性に関する行動も,「人との近接を求める」欲求や関係性から形成されている。学校教育の現場では,コロナ以前から,児童・生徒の「人との近接を求める」欲求や関係性が,教育者の目から「性」に関するものと判断されると,さまざまな制限がなされ,子どもに関わる大人が,「性」に関する問題にできるだけ触れないよう過ごすことが推奨されてきた。
本研修では,「人との近接を求める」やり方が確かに逸脱してしまっている性虐待被害児,そのやり方が適切に学習できていない発達障害のある子どもの見立てや対応について,一緒に考えたい。

研修④

【領域】

心理教育的アセスメント

【テーマ】

WISC-IV検査結果と発達支援実践の橋渡し
―つまずきの原因の理解と対応の提案―

【講師】

大六 一志(公認心理師)

【概要】

WISC-IVは,学齢児(5~16歳)に使用される代表的な知能検査である。知的能力の個人内差(得意不得意)の特徴を把握できることから,知的障害,発達障害のアセスメントに広く活用されている。アセスメントは本来,子どものつまずき(主訴)の原因および対応策を明らかにするのが目的であり,WISC-IVも例外ではない。得点が高いとか低いとかいうことを報告したり,それを教科書通りの何パターンかの解釈に置き換えたりするだけでは,WISC-IVを活用したとは言えない。また,WISCの数値だけでは正しい解釈にたどりつけないことが多く,他検査の結果,および行動観察や背景情報も収集することが不可欠である。以上をふまえつつ,本講座では,全検査IQ(FSIQ),および4つの指標得点を中心に,代表的な解釈(つまずきの原因)と対応策についてお話しする。

研修⑤

【領域】

特別支援教育

【テーマ】

自閉スペクトラム症の子どもたちと二次障害 と予防的・発展的支援のあり方

【講師】

下山 真衣(信州大学学術研究院教育学系 准教授)

【概要】

自閉スペクトラム症のある子どもたちへの相談支援を行う中で現代的な課題が二次障害への対応です。このような二次障害には不安,抑うつ,問題行動,不登校,非行などの二次障害があげられます。その背景としては,非定型発達の子どもへの理解や支援内容の不足や不適切さが一つのリスクとなっていると考えられます。これらを予防するため,また充実した生活を送るための発展的な支援のあり方について本講座では取り上げます。講座では特別支援教育における自立活動の観点から自閉スペクトラム症の子どもたちが自らを前向きに捉えるために必要なことを検討していきます。二次障害の予防や問題解決のための子どもの主体的な行動を支えるアイデアを考えるための講座となります。

研修⑥

【領域】

生徒指導・教育相談、キャリア教育

【テーマ】

現代社会で求められるキャリア形成とは

【講師】

児玉 真樹子(広島大学大学院人間社会科学研究科 教授)

【概要】

急速な技術革新がもたらした産業・職業界の変革は,個人のキャリア形成に大きな影響を及ぼしている。このような社会において「自分らしい生き方」を実現するために必要なものは何だろうか。そのために学校教育に求められるものは何だろうか。この研修会は,①現在の社会状況,②キヤリア形成とは,③これからの社会で生きていくために学校教育に求められることとは の3つのテーマを扱う。この研修会では,オンデマンドでの講義のみでなく,個人で行う課題も提示する。これらを通して,自分自身のキャリア形成や,児童生徒のキャリア形成支援について,知見を深めていただきたい。

研修⑦

【領域】

学校危機対応

【テーマ】

学校危機における対応と予防について

【講師】

小林 朋子(静岡大学教育学部 教授)

【概要】

事件事故だけでなく自然災害など学校危機はいつどこで発生するかわからない。そのため,学校に関わる教師およびSC・SSWが学校危機への対応について基礎的な知識を持っていることは初期対応において非常に重要である。本研修では,「支援者のための災害後のこころのケアハンドブック」を用いて学校での心のケアに関する対応を学ぶともに,予防の考え方についても理解を深めていく。

研修⑧

【領域】

その他

【テーマ】

医療と教育との連携 ―学校医を含む医師と学校とのより良い関係―

【講師】

田山 正伸(田山チャイルドクリニック院長・徳島大学・徳島県医師会常任理事(学校保健担当理事))

【概要】

最近,子どもを取り巻く課題は多くかつ複雑になり,教育現場ではその対応に困窮することがあります。そうした課題への対応には医療と教育との連携が必須となり,医療側は学校医を中心とした医師,教育側は養護教諭を中心とした教育関係者のそれぞれの密なる連携が必要です。徳島県医師会は学校保健に関する活動を教育委員会及び学校と協働して取り組んでおり,その状況と成果を報告します。

SV研修①(SV研修II)

【テーマ】

チーム学校時代の学校カウンセリング・コンサルテーション
―子ども,教員の援助要請からのアプローチ―

【講師】

水野 治久(大阪教育大学 高度教職開発系 教授)

【概要】

学校現場では,令和時代の新しい学校教育のあり方が模索されている。今後は,子どもの発達を汲み取りながら,一人ひとりに丁寧な支援がより一層求められる。この研修では,チーム学校を意識した学校カウンセリング,コンサルテーションのあり方について検討する。特に,子どもや教員の助けを求める意識や態度(援助要請)の視点から考え,今の学校現場から求められている学校カウンセリング・コンサルテーションについて受講生の皆さんと一緒に考えたい。

SV研修②(SV研修III)

【テーマ】

レジリエンスの考え方の活用

【講師】

池田 誠喜(鳴門教育大学教職大学院 高度学校教育実践専攻 教授)

【概要】

2000年以降,日本のヒューマンサービス領域でレジリエンスが知られるようになり,研究や実践が広がりを見せております。学校教育現場でもレジリエンスの考えを活用した実践も報告されてきおり,学校心理士としてもレジリエンスに関する知見を持って教育支援サービスに関わることは有益になるものと思われます。
 そこで,本研修は,今後,教育現場でレジリエンスの考えや活用事例などを紹介しながら,学校心理士にとって,教育現場で役立つ教育支援サービスを生み出すヒントになることを目指して行います。

准学校心理士研修

【テーマ】

ワーキングメモリと学習や生活との関連
―ケースレポート執筆のポイントを踏まえて―

【講師】

小澤 郁美(富山大学 人間発達科学部 発達教育学科 講師)

【概要】

本講座では,子どもの学習や生活と関連深い「ワーキングメモリ」について取り上げる。ワーキングメモリとは短時間必要な情報を覚えておきながら処理するという記憶機能である。ワーキングメモリには個人差があり,ワーキングメモリ容量が小さいと学習や生活に様々な困難が見られる。講座内ではワーキングメモリ容量が小さい子どもたちに対し,どのような支援が考えられるかについて紹介する。また,学校心理士資格取得に向け,ケースレポートの執筆についても触れる。