第61回日本医療・病院管理学会学術総会

学術総会長挨拶

第61回学術総会の開催を迎えるにあたって

一般社団法人 日本医療・病院管理学会
第61回日本医療・病院管理学会 学術総会長 筧 淳夫
(工学院大学建築学部 学部長・教授)

 2020年から始まったCOVID-19によるパンデミックは、およそ3年を経過して、その間に国内の医療提供体制の脆弱性を露わにしました。OECD各国のデータと比較するまでもなく、日本は限られた人的医療資源を、数多くの物的医療資源(病院)に「広く」「薄く」配置しています。このような医療提供体制が継続できたのは、医療関係者の献身的な努力によるところが少なくないことは明らかです。一方で、国民皆保険、フリーアクセスという制度とともに、このような医療提供体制のおかげで、国民は「いつでも」「どこでも」「だれでも」が医療を受けることができると言った、世界的に極めて恵まれた状況を甘受してきました。しかし、その限界が平成時代の後半から見え始め、今回のパンデミックで一層明らかになったのではないでしょうか。よって、既によく言われているように医療スタッフの「働き方改革」と、医療施設の「選択と集中」は避けて通れない課題であり、今多くの医療現場において、もう待ったなしで対応が求められています。
 しかし、このような改革は医療制度や個々の医療施設における個別の努力だけで解決できるものではなくなってきているのではないでしょうか。例えば医療施設の選択と集中を行うとしたら、当然患者の医療施設へのアクセシビリティが問題となります。その対策は患者の移送方法や情報の伝達方法、物品の配達方法などについての革新的な技術やシステムによって補うことも考える必要があるでしょう。つまり医療提供体制の改革は医療業界だけの議論ではすますことができないと言うことになります。
 さてこの度、本年11月4日(土)と5日(日)にかけて、東京都内(工学院大学新宿キャンパス)で学術総会を開催させていただくこととなりました。テーマは「新たに問われる学際的な医療・病院管理学」です。より多彩な方々との交流を深めることにより、医療・病院管理学を発展させる切っ掛けにすることができればと考えています。そして、今回の企画においては「学びの場」「出会いの場」「研修の場」の3つを学術総会の位置づけとし、プログラムを組んでいます。学会発表やシンポジウムなどのプログラムにおける学びの場、4年ぶりに対面での開催による出会いの場、オンデマンドなどを活用しながら資格取得につながる研修の場を有効に行かしてください。
 この3年間、対面での学術総会を開催することができませんでしたが、今年はこの間の学術総会長が創意工夫して築き上げた遠隔による開催のノウハウを活かしつつ、対面での実施というハイブリッドを目指しています。これからの学術総会の1つのあり方を試みたいと思いますので、是非とも大勢の方々の出会い、そして再会の場としてもご参加下さい。