2025年9月19日配信
日頃より、本会の活動にご理解とご協力を賜りありがとうございます。
第34回大会について、ご案内申し上げます。
「感覚の「なぜ?」をとことん!」
大会企画ワークショップ1 井手 正和(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
本大会において教育講演と大会企画ワークショップを担当させていただきました国立障害者リハビリテーションセンター研究所の井手正和です。
教育講演のタイトルは「感覚過敏と感覚鈍麻」です。感覚過敏では、例えばわずかな音に対してもうるさいと感じたり、それによって頭痛を経験したりします。感覚鈍麻では、大きな音が鳴っていてもそちらに反応を示さなかったりします。したがって、両者の特徴は一見相反する特徴のように感じます。しかし、感覚過敏と感覚鈍麻は一人の個人の中で併存することが多いです。そのため、ある時に過敏を訴えていた個人が、別の時に鈍麻を訴えていると、前者の訴えが思い違いであったなどと思われてしまうことにも繋がります。こうした誤解が生じないように、感覚過敏と感覚鈍麻それぞれのメカニズムとその共通性について理解することが大切です。
本講演では基礎研究から明らかになってきた感覚過敏と感覚鈍麻の神経生理学的なメカニズムを解説します。自閉スペクトラム症児・者の脳の特徴として興奮と抑制のバランスの不全(E/I imbalance)というものが知られています。この特徴は脳の抑制性の神経伝達物質であるGABAの代謝に影響し、脳の様々な部位におけるGABAの濃度にアンバランスをもたらします。このことは視覚、触覚、聴覚等々の刺激を受け取った際の中枢神経の活動の強さにも影響し、究極的にはどのくらい刺激を鋭敏に処理するかにも関わると考えられます。このGABAの代謝不全がどのような知覚処理の鋭敏性と結びつき、結果として感覚過敏や感覚鈍麻に結びつく可能性があるのかを解説します。
大会企画ワークショップでは、「感覚過敏を『体験』から理解する」をテーマとして、目に見えにくいこの「感覚」の困難を実際に「感じて」みることで、子どもたちへの理解を深める機会にしたいと思っています。
このワークショップでは、そのためにいくつかの企画を用意しております。1つ目は、「感覚の違いを実験で『見える化』」するもので、私が普段、研究で用いている「心理物理実験」を参加者の皆さまに体験してもらうものです。心理物理学は、私たちが光や音などの刺激を感じるとき、その刺激の物理的な特性と、私たちの感覚・知覚とがどの様に対応するかを調べる研究手法です。たとえば、どのくらいの音量があれば、その音の刺激を知覚できるのかという「閾値(しきい値)」がわかると、人にとって適切な音の環境を設計することが容易になるでしょう。感覚の問題を抱える子どもは、そうでない人と閾値がどの程度異なるのかがわかれば、物理的な刺激に対する感じ方の違いが客観的に「見える化」できます。
刺激の物理特性と、それの感じ方がわかれば、どのような物質を使えばより「感じないようにできるか」の見通しが立ちます。そこで2つ目に、「感覚特性に応じた生活の工夫を共有」する企画を用意しました。私が当事者の方から聞き取った経験談をもとに、音への過敏がある人向けの対策グッズをご紹介いたします。この企画では、そのグッズを使ってどのように音の聞こえ方が変わるのか体験していただき、さらに、騒音の計測機器を使って物理的な特性と聞こえ方との関係を見える化したいと思います。
さらに、3つ目の企画として、「参加者同士で語り合う『語りの森』」を用意いたしました。感覚の問題に悩む当事者やそのご家族・支援者の方々から、普段の困り事やその対策法など、様々な「語り」を集め、共有する場を設けます。ご参加いただいた方には、自由にコメントを書いていただき、「語りの木」へ貼っていってもらうことで、集合知の「森」を作っていきたいと思います。
この他に、今回の企画では感覚の問題を評価するアセスメントツールの体験やその解説、さらに、いま私たちが開発している子どもの感覚の問題を計測する質問紙をご紹介したいと思います。これらの企画は、作業療法士であり、実際に子どもの感覚の問題への支援を行っている、関西医科大学の松島佳苗先生、子どもへの療育をご専門とする、株式会社エルチェの近藤鮎子先生、感覚の問題を起こす脳の特性を研究している、杏林大学の渥美剛史先生との共同企画です。研究や支援の実際を知るのみならず、専門の先生方から興味深いをお話を聞けるまたとない機会ですので、ぜひご来場下さい。
大会企画ワークショップ1(会場のみ)
感覚過敏に関するワークショップ
- 講師:
- 井手 正和(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
- 講師:
- 渥美 剛史(杏林大学)
- 講師:
- 近藤 鮎子(株式会社エルチェ、江戸川区篠崎児童発達支援センター)
- 講師:
- 松島 佳苗(関西医科大学)
大会プログラムを公開しました
大会プログラムをホームページにて公開いたしました。
ぜひご確認ください。
通常参加申込み締切が迫っています
- 通常参加申込期間:
- 2025年7月8日(火)~9月23日(火)
- 諸費用の納入期限:
- 2025年9月23日(火)
- 会場での当日参加受付は行いません。会場での参加を希望される方は通常参加申込期間に申込をお願いいたします。
託児の申込受付中
会期中、会場に託児室を設置いたします。
利用をご希望の方は、託児のご案内ページから利用規約をお読みいただき、ご理解・ご同意の上、10月4日(土) 17:00までにお申し込みください。
特別支援教育士資格更新ポイントと参加者のポイント申請について
本大会の参加者ポイントについては、資格更新ポイントのご案内ページからご確認ください。